もう13日目。
14日目である明日は、検査日。
検査日とは、一日がかりで数回にわたる血圧測定・心電図測定、10数回に渡る採血、蓄尿を行う鬼の一日のことだ。
入院1日目の、あの冷や汗で背面がびっしょりになったのを思い出すと、僕も成長したなぁとしみじみ。
今ではもう、採血なんてへっちゃら。400mlだろうが1ℓだろうが、かかってきやがれ!
せっかく治験に参加しているので、治験に参加しているからこそ「治験について知ろう」という意欲が沸いているし、伝えようと調べて努力したら覚えるし、一石二鳥。治験についてもう少し詳しく、そして治験の歴史を見ていこうと思う。
前にも言いましたが、僕が今回参加している治験は19泊20日の治験。
治験とは厚生労働省(リンク:厚生労働省ホームページ)から新しい薬の製造販売承認を得るために、人での
有効性(薬の効き目)と安全性(薬の副作用)
これら2つを調べる、※1臨床試験のこと。
この治験に用いられる薬を「治験薬」という。
治験には第Ⅰ相、第Ⅱ相、第Ⅲ相という3つのフェイズがある。それは下記の通り。
・第Ⅰ相
少数の健康な人(志願者)を対象に、主として※2薬物動態および副作用などの安全性について確認。
・第Ⅱ相
少数の患者を対象に、有効で安全な投薬量や投薬方法を確認。
・第Ⅲ相
多数の患者を対象に、有効性と安全性に関して既存薬との比較を行う。
そして以上の治験で得られた結果を厚生労働省へ提出し、薬として認可することが適切かどうか判断されるというフロー。厚生労働省は「医薬品の臨床試験の実施の基準」(GCP)(リンク:厚生労働省ホームページ)というものに照らし合わせて判断する。
言うまでもないですが、僕が参加しているのは第Ⅰ相(太字)です。
ちなみに、僕は※3慢性気管支炎と※4肺気腫を併発した病気の治療を目的とした新薬の治験に参加しています。レスピマットという吸入器具を使って薬を噴射させて吸入するタイプのものです。
薬の服用期間は14日間、毎朝1回、100μgを吸入していて、上述した治験の目的とは別に、血液と尿中の濃度の変化を図ることで、日本人に適切な治療量を図ることも目的としているそう。 なぜなら、これは調べてわかったのですが、頻尿対策にも使われるのがこの新薬みたい。
ちなみに、運がよければ、見た目も味もホンモノと区別がつかない、有効成分ゼロ、つまり副作用がほぼないプラセボ薬に当たることもあります。(プラセボがない治験もあるみたいです)
治験生活は、
軍隊のようにきっちりとスケジュールが決まった生活…
刑務所のような息苦しさ…
ではまったくありません
僕が参加しているところが特別なわけではないようです。他の治験病院も、都市部にあるのなら大概設備が整っていると思います。
スケジュールは、
起床時間
検査時間(血圧・採血・医師による診断)
薬を飲む時間
食事の時間(朝・昼・晩)
を除けばフリーです。
設備も
・インターネットはMicroSoftOfiiceがインストールされていて、回線はADSL(けどそこそこ早い)
・漫画(ジャンプ・マガジン・サンデー・チャンピオン・ヤンマガ・ヤンジャンなど週刊マンガ)
・雑誌(週刊誌含む)
・新聞(朝日と毎日とスポーツ紙2部)
・浴槽とシャワー
・ミネラルウォーター飲み放題
・テレビ3台月。DVDがレンタルできる(無料)見れるし、プレステ2もレンタル(無料で)できる。
・洗濯機・乾燥器付き。
・歯ブラシ・髭剃り・タオルは自由に使える。
などなどで、
清掃員のおばちゃんが掃除してくれているので、部屋もトイレも洗面所も、いたるところがきれいです。前にも書きましたが、満喫を明るく・グレードアップさせた感じです。
まぁ、僕が参加しているのに関していえば、そんな感じです。
では次、薬の歴史です。面白いよ。ワクワク。
・起源から
西洋では、確認できるものでは、紀元前4000年前の古代メソポタミア文明の頃のシュメールタブレット(粘土版に楔形文字を刻んだもの)に、もうくすりの作り方が残されていたみたい。もう6000年くらいも前だ。
それから紀元前1500年の古代エジプトの時代で書かれたパピルス・エーベルスには700種類もくすりが記載されていたそうな。
18世紀~19世紀の近代産業革命の時代に入るまで、科学というのはまだ確立されていなかったので、もちろんこれらの時代には信仰やまじない(祈祷)で治療しようという「非科学的」「神秘的」な方法もまだまだ優生だったのでしょう。
ところ変わって東洋では、西洋から4000年以上も遅れ、西暦100年に東洋最古と言われる薬物書・神農本草経(しんのうほんぞうきょう)というものが書かれたそうです。
神農とは中国古代の伝説上の皇帝で、百草を舐めて効能を確かめ、医療と農耕を民に伝えたといわれているそうです。
この中で薬は上品(じょうほん)、中品(ちゅうほん)、下品(げほん)と分類されていたそう。
・上品は養命薬、つまり体を軽くし、元気を養うといった薬で、無毒で長期間服用しても大丈夫なもの。
・中品は養生薬、病気を予防し、虚弱な体を強いものに変えることを目的としたもので、使い方次第では毒にもりかねないもの。
・下品は治療薬、病気を治すために用いるが、毒となる成分が多く長期間に渡っての服用はいけないとされていた。
神農本草経に記載されている薬は2000年たった今でも使われているらしく、すでに中国医学の基礎は2000年以上も前に完成の域に達していたと言われているそう。さすがチャイナ。
ちなみに日本では、飛鳥時代に中国から仏教とともに漢方薬が伝来したのがはじまりだそう。聖徳太子が仏教信仰のために建てた大阪の四天王寺の中にも、薬草を栽培したり、くすりの製造や調合、処方をする施設があったそう。ちょっと歴史の勉強もできちゃった。
・くすりの転換点
さて、さっきも触れましたが、18世紀~19世紀の近代産業革命の時代、科学の発展とともにくすりも発展していったそうです。産業革命と言えば、「実験」が導入されたことが大きな特徴ですね。具体的な有名どころをあげたら…
1796年にジェンナーが※5種痘法を完成。1880年にパスツールがワクチンによる伝染病の予防法を確立したなど、医療=サイエンス(太字)になって、近代薬学の時代が到来したといわれている。
20世紀に入ると、もっと綿密な研究が進む。※6サルファ剤など、細菌の発育を抑える科学治療剤が開発され、さらに1929年にはフレミングの※7ペニシリンの発見をきっかけにして、細菌感染症の特効薬となる※8抗生物質が次々と生まれ、
くすりの使用=化学療法(太字)
という考え方が一般的になった。
僕らが今使っているくすりは、ほとんどが産業革命期後の近代薬学の流れの上につくられたものだそう。
歴史をざっくりと整理するとこんな感じ。
ここでも東洋と西洋の価値観の違いが読み取れてしまうのは、面白い。
哲学の勉強にも、大いに役に立つ。
全体的・根源的な東洋と、局部的・科学的な西洋という特徴が浮き立ってくる。
まるで、東洋哲学と西洋哲学のような観点だ。
前者は理性だけを重んじていなかった、後者は近代まで理性こそ最高善だという考えが広まっていた。
面白くなってきた。
新タスクを追加しよう
■東洋哲学と西洋哲学
■東洋医学と西洋医学
についてもっと調べてよう。
最後に余談
ひとつのくすりが生まれるまでにかかる時間は10年~20年。薬になりそうだという物質を発見、もしくは合成して研究開発がスタートしてから、正式に薬として製造認可される確率は1/10000と言われているそうです。つまり、くすりひとつ出来上がるのでも、大変なコストと労力を要するということ。
昔は医師自身が薬になりそうなものを使用して薬効を試してみたり、囚人や植民地の奴隷たちに飲ませてみたりしていたそう。
それらの反省が治験だそうですよ。
最後の最後に、
ここだけの話ですが、8月28日に正式に治験が終わり、もらえる額は総計45万円ほどです。桁外れでしょ…
また冬休みに(Ⅰ2月末~1月~2月)でも参加しよっかな。
どうせ大学の試験もないし。
※1臨床試験
新薬を開発するうえで、人間で有効性と案税制を調べる試験のこと。「臨床」とは病「床」に「臨」むことの意味であり、患者に望むもの全般について形容される。たとえば臨床心理学とか臨床心理士とか。動物での実験は、非臨床試験とも言ってるみたい。
※2薬物動態
「薬物動態とは、投与された薬に対する生体の作用を意味します。つまり、吸収や分布、代謝、排泄などのプロセスとこれらのプロセスにかかる時間のことをいいます。 」
(メルクマニュアル「家庭の医学」より)
※3気管支炎
細菌やウイルス、時に物理・科学的刺激やアレルギーによる気管支の炎症。 ちなみに
「気管とは、吸い込んだ空気が口とのどを通り、肺へ入るため通路に当たる太い管です。気管支とは、気管が左右に分かれた後の管で、さらに枝分かれして肺胞という無数の小さな袋に達します。気管と気管支という通路を介して肺に空気を送ります。気管と気管支は呼吸器系の臓器の一つです。呼吸器系とは、呼吸に関連する器官のことです。これには鼻、咽頭、喉頭、気管、気管支、肺があります。
気管や気管支は、空気の流れ道であるとともに、粘液を分泌し、ほこりや細菌を捕らえます。この粘液は食道に飲み込まれるか、痰(たん)となって排出されます」(出所:東京慈悲医大ホームページより)
※4肺気腫
肺組織の弾力性がなくなり、肺胞が拡張子、肺が過度に膨張した状態。強い咳、肺の使い過ぎ、慢性気管支炎、肺結核などが下人とされる。咳が多く、肺活量が減り、呼吸困難、チアノーゼ、動悸を生じ、胸郭の運動が減退する。
※5種痘法
天然痘を予防するためにジェンナーが行った方法。
※6サルファ剤
化学療法薬(病原微生物に対して殺菌作用、あるいは発育抑制作用(静菌作用)を持つ化合物や、抗がん、抗腫瘍活性を持つ化合物のうち化学的に合成されたもの)のひとつ。サルファ剤(さるふぁざい)とは、細菌の増殖に必要となる葉酸(ようさん)(ビタミンB複合体の一つで、酵母、糸状菌、肝臓、卵、アスパラガス、ホウレンソウなどに含まれる。赤血球母細胞の成熟、乳酸菌などの微生物の増殖促進などの因子として知られる)という物質と非常に似ていることから、細菌に葉酸と勘違いしてサルファ剤を取り込ませ、細菌の増殖をさせないようにして細菌を死滅させる薬。
近年では、抗生物質の登場によりサルファ剤の利用機会は失われつつありあまり利用されていない。
※7ペニシリン
世界で最初に発見された抗生物質。数々の感染症の治療に使われている。
※8抗生物質
化学療法薬と同様の作用を有し、微生物が産生するものが抗生物質と呼ばれている。
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